生牡蠣食わせろ

妊婦が生牡蠣食うまでの記録

生後7か月 ピザ

今週のお題「買ってよかった2022」

 

結婚して1年経たないうちに3人家族になった。

結婚直前、仕事が鬼ほど忙しい上にクセの強い義実家とそれに噛み付く実家との板挟みで修羅を極めていたらうつ状態になって、もやもやした頭で川で流されるごとく入籍した。そのまま流れていたら妊娠して今に至るので、「結婚やったー!これから2人の生活だ!」「妊娠やったー!これから3人の生活だ!」とかいう気持ちの区切りがなかった。動かない頭に焦りを感じていたか、薬の副作用でこんこんと眠っていたか、つわりで呻いていたか、切迫早産で入院していたか、寝不足で子育てをしていた。今は子どもを死なさないようお世話するのでいっぱいいっぱいなのだ。そんな感じてぬるっと2020年も最後の月に突入した。

そんな中、年末だしかねてより夫と夢見ていた「大きな本棚を買って家族全員の本を収納し、図書スペースを作る」を現実にしようか、と相なった。

高さが天井まである幅60cmの本棚を2つポチったら3日後くらいに来た。結婚する前から言っていたけど中々腰が上がらずにいた共用本棚がワンクリックで届いた。えー、はや!

子が寝てから夫と1つずつ組み立てることにした。想像以上に大変だった。1時間くらいで出来るかと思ったけど全然無理。お風呂入ったのに汗だくだし、重いから疲れるし、ネジをきつく締めすぎて手は真っ赤。全然終わらん。

子が起きたので乳をやって寝かしつけて戻ったら夫に「組み立て間違ってたからやりなおしといたよ」と言われた。まじか。ごめん。二度手間になったのに、夫は「なんでミスったの」とか人を責めない。最近は夫と喧嘩が増えていたから忘れていたけど、そうだこの人はこういう人だった。やってしまったことをぐちぐち言わない。本当かっこいいし美しいし尊敬する。

完成したのは午前3時過ぎ。リビング、ソファの前に背の高い本棚。思っていたより圧迫感はない。そこに本を並べていく。

1番下には子の絵本、いつか子が読むという免罪符のもと集め直した漫画。その上には好きな児童文学、小説、エッセイ、歌集。手に取りやすい位置に育児書や雑誌。目線の高さに文庫本。その上に勉強関係の本、友達たちが書いた本。上に行くに連れ仕事関係の本が増える。本棚の横にブックタワーを置き、読みかけの本、図書館や友人から借りた本を積ん読する。今まで各自が保管していた本が一堂に会する。2冊ある本もある。

午前4時、大きな本棚は7割ほど埋まった。夫は仕事関連の本が多いと思っていたけど小説が多かった。私は漫画が多いと思っていたけど勉強関連の本が多かった。自分の本棚はあったけど、この本棚に入れるまで気づかなかった。

ソファに腰掛け、目の前の本棚を眺める。なんだか妙な気分だった。私はこれがしたかったんだ、と思った。本は好きだけど、多分それより本が並んでいるのが好きな気がする。まだ読んだことのない本がずらりと並んでいるのに心が躍る。人の本棚なんて最高。あなたを構成する本たちが並んだ空間だから。あなたが読んだ、という点でさらにそれらの本が興味深くなる。あなたの読んだものを知ればあなたが分かるわけではないが、あなたの血肉になった本、ぜんぜん心に残らない本、あなたが目を通した(またはまだ目を通していない)本が並んでいるのが大好きだ。なんだか無性に愛しいのだ。

家族共有の本棚が欲しかった。私が読んだ本を夫や子も読むかもしれない、夫や子の読んだ本を私が読むかもしれない。読まないかもしれない。それがいい。家族が選んで収めた本、というもので、直接的ではなく、不確かなコミュニケーションが出来る。そんな空間が欲しかった。

そういや私たちは結婚式を挙げていないし、組み立てが必要な大きな家具を買ったのはこれが一つ目。これが初めての共同作業だ。眠いし重いし大変だしイラついたしお互い舌打ちしながら作った本棚に全ての本棚を収めた今、ああ私は結婚したんだ、子を産んだんだ、夫と子と私の3人で家族なんだなあと思った。当然だしわかっていたはずだけど、その時やっと実感が湧いてきた。

夫にそう伝えると「わかる」と言われた。そうか分かってくれるか。めちゃくちゃ疲れたけど、めちゃくちゃ最高な気分。夫は「疲れた。ピザ食べたい。ピザ屋24時間やってたらいいのに。明日の夜ピザにしよ」という。いいなピザ。頼んだら持ってきてくれるし食器洗わなくていいし。そうだねそうしよ。そう言って午前5時、やっと布団に入った。